蜂の巣を自分で駆除するという決断をしたならば、それはあなた自身が「害虫駆除の作業員」になるという自覚を持つことから始まります。プロの現場で事故が少ないのは、優れた技術があるからだけではなく、それ以上に「装備の不備が死に直結する」という極めて高い危機意識があるからです。初心者が自分で作業を行う際、最も軽視されがちなのが服装の選択です。蜂は黒い色や原色を敵と見なし、執拗に攻撃してくる性質があるため、着用するものは必ず白、あるいは非常に薄いベージュ系の色で統一してください。生地の厚みも重要で、蜂の針はデニム程度の厚みなら容易に貫通してしまいます。推奨されるのは、表面が滑らかで蜂の足がかりになりにくいビニール製のレインコートの下に、厚手のスウェットや作業着を重ね着するスタイルです。首回りは最も狙われやすい急所であるため、タオルを巻いた上からフードを被り、さらにその上から防虫ネットを装着して、ガムテープで隙間を完全に塞ぎます。手には軍手ではなく、厚手のゴム手袋を着用し、さらに袖口をテープで固定することが不可欠です。次に、道具の選定ですが、市販の殺虫剤の中でも必ず「蜂専用」かつ「即効性」を謳った強力なものを準備してください。最近では噴射距離が十メートルに達するものもありますが、実際に狙いを定めて確実に命中させるには三メートル程度が限界ですので、余裕を持って二本から三本は予備を含めて用意しておくべきです。また、夜間の作業には懐中電灯が必須ですが、蜂を刺激しないために必ず赤いレンズやセロハンを被せ、光の強度を落としてください。さらに、駆除した後の巣を落とすための長い棒、死骸を回収するためのトング、そしてそれらを入れるための厚手のゴミ袋も事前に手元に揃えておかなければなりません。作業中に「あれがない、これがない」と慌てることほど危険なことはありません。全ての道具を一つのバケツやバッグにまとめ、利き手ですぐにスプレーを手に取れる状態を整える。こうした細部へのこだわりと、自分自身の身体を「白い要塞」のように守る心得こそが、蜂という自然の脅威に立ち向かい、無事に平穏な生活を取り戻すための、唯一にして絶対の条件となるのです。準備を笑う者は蜂に泣く、という言葉を肝に銘じ、万全の態勢で臨んでください。