身近な場所に巣を作ることが多いアシナガバチは蜂の巣ができるまでの過程を観察するのに最適なモデルケースであり彼らの巣作りのペースを知ることで他のハチへの対策にも応用できる知識を得ることができます。アシナガバチの巣はスズメバチのように外皮に覆われておらず六角形の巣穴が露出しているためその成長過程が一目瞭然です。春に一匹の女王蜂が巣作りを始めてから最初の働き蜂が羽化するまでの一ヶ月間巣の大きさは直径四から五センチメートル程度部屋数は十数個といったところで停滞しているように見えます。この期間は女王蜂が体を休めるために巣の上でじっとしている時間も長く変化が少ないため「あれ?もう巣作りは終わったのかな」と勘違いしてしまうこともありますがこれは嵐の前の静けさです。六月中旬頃になり働き蜂たちが活動を開始すると巣の縁に新しい部屋が次々と付け足されていきまるで白い花が咲くように巣は外側へと広がっていきます。観察を続けると条件が良い日には一日で数個の部屋が増設されることもあり特に幼虫が成長してサナギになるタイミングで部屋の蓋(繭)が作られると巣全体が白っぽく変化し活気が出てくるのがわかります。七月から八月の最盛期には巣の直径は十センチから十五センチメートルに達し数十匹のハチが巣を覆い尽くすようになりますがここまでの期間はおよそ三ヶ月から四ヶ月です。つまりアシナガバチの場合「何日でできるか」といえば完成形になるまでには数ヶ月を要しますが「駆除が困難になるサイズになるまで」といえば働き蜂が羽化し始めてからの数週間が勝負となります。また興味深いことにアシナガバチは雨の日や風の強い日には巣作りを中断し巣の裏側に隠れてじっとしていることが多いため天候不順が続く梅雨の時期などは成長が一時的に停滞することもあります。しかし梅雨明けとともに爆発的なラストスパートをかけるため夏休みの始まりとともに急に巣が目立つようになったと感じるのはこのためです。彼らの巣作りは決して一定のペースではなく働き蜂の数や天候そして餌となるイモムシなどの発生状況によって波があることを理解し日々の変化を見逃さないようにすることが大切です。アシナガバチは益虫としての側面もあるため生活に支障がない場所であればその巧みな建築技術と家族の絆をそっと見守るのも一つの選択肢ですが危険な場所に作られた場合はその成長曲線が急上昇する前に早めの決断を下すことが求められます。