天然成分で安心、そして爽やかな香りでゴキブリを遠ざけてくれるハッカ油。しかし、その効果は万能ではなく、いくつかの「限界」と、使用する上での「注意点」が存在します。これらを正しく理解せずに、ハッカ油だけに頼り切ってしまうと、思わぬところで対策が破綻してしまう可能性があります。まず、最も重要な限界は、ハッカ油が持つ効果は、あくまでもゴキブリを「寄せ付けない(忌避する)」だけであり、「殺す(殺虫する)」力はほとんどない、ということです。つまり、すでに家の中に巣を作り、繁殖してしまっているゴキブリの群れに対して、ハッカ油スプレーを撒いただけでは、彼らを家から完全に追い出すことはできません。一時的に、匂いの強い場所を避けるかもしれませんが、匂いが薄れれば、またすぐに活動を再開します。ゴキブリを根絶するためには、ベイト剤(毒餌)などの殺虫成分を持った駆除剤との併用が不可欠です。ハッカ油は、あくまでも、駆除後の「再侵入を防ぐための予防策」や、「遭遇率を下げるための補助的な手段」と位置づけるのが正しい認識です。また、ハッカ油の香りは、永遠に持続するわけではありません。主成分であるメントールは揮発性が高いため、スプレーの効果は数時間程度、置き型のアロマでも数日で薄れてしまいます。効果を維持するためには、こまめにスプレーし直したり、オイルを垂らし直したりといった、継続的な努力が必要です。そして、前述の通り、最も注意すべきなのが「ペットへの影響」です。特に、猫はハッカ油の成分を体内で分解する能力が非常に低く、肝臓に深刻なダメージを与え、中毒症状を引き起こす危険性があります。犬に対しても、過度な使用は避けるべきです。また、鳥やハムスターといった小動物も、強い香りにストレスを感じることがあります。ペットを飼っているご家庭では、ハッカ油の使用は慎重に、あるいは完全に避けるべきでしょう。