「スズメバチ」という名前がついている以上、クロスズメバチの危険性を、私たちは正しく理解し、最大限に警戒する必要があります。彼らは、オオスズメバチのように、積極的に人間を襲うほどの凶暴性はありません。基本的には温厚な性格で、こちらから何もしなければ、攻撃してくることは稀です。しかし、一度、彼らのテリトリーである「巣」を脅かす存在だと認識されると、その性格は一変します。巣を守るため、彼らは命がけで、そして執拗なまでの集団攻撃を仕掛けてくるのです。クロスズメバチの最大の危険性は、彼らの巣が「土の中」にあるため、その存在に気づきにくいという点にあります。ハイキング道のすぐ脇や、公園の芝生の片隅、あるいは庭の木の根元など、私たちが何気なく歩いている地面の下に、数千匹の兵士が潜む要塞が築かれているかもしれないのです。そして、知らずに巣の真上を踏みつけてしまったり、草刈り機などで巣の入り口を刺激してしまったりすると、地中から無数の働き蜂が湧き出てきて、侵入者を猛攻撃します。一度攻撃のスイッチが入ると、彼らは非常に執拗です。標的を数十メートルにわたって追いかけ続けることもあります。次に、その「毒」の強さです。クロスズメバチの毒の成分は、他の大型スズメバチとほぼ同じで、強い痛みを引き起こす神経毒や、組織を破壊する酵素などが含まれています。毒の量自体は、体の大きさに比例して少ないですが、何度も繰り返し刺される「集団攻撃」を受けることで、体内に注入される毒の総量は、決して侮れないものになります。そして、最も恐ろしいのが、「アナフィラキシーショック」です。これは、蜂の毒に対する、体の過剰なアレルギー反応であり、一度蜂に刺されたことがある人が、二度目に刺された際に発症するリスクが高まります。刺されてから数分~数十分以内に、全身のじんましんや、呼吸困難、血圧の低下といった重篤な症状が現れ、最悪の場合、命に関わることもあります。温厚な顔の裏に隠された、スズメ-バチとしての本性。その危険性を、決して軽視してはいけません。
クロスズメバチの危険性、その攻撃性と毒の強さ