日本に生息する数あるハチの中で間違いなく最強にして最恐の存在として君臨しているのがオオスズメバチであり彼らは単なる昆虫の枠を超えて森の生態系における頂点捕食者の一つとして数えられるほどの圧倒的な戦闘能力を誇っています。体長は働き蜂でも三センチメートルから四センチメートル女王蜂になれば五センチメートル近くにも達しその羽音はブォンブォンという重低音を響かせて周囲の空気を震わせるため一度聞けば忘れられない恐怖を植え付けられます。彼らの最大の特徴はその攻撃性と毒の強力さにあり毒針から注入される毒液は「毒のカクテル」と呼ばれるほど複雑な化学成分を含んでおり激痛をもたらすだけでなく組織を破壊しアレルギー反応を引き起こして最悪の場合は死に至らしめる力を持っています。しかし彼らの武器は毒針だけではありません。強靭な大顎は他の昆虫の外骨格を容易に噛み砕くことができカマキリやクモといった他の肉食昆虫でさえもオオスズメバチの前では無力な獲物に過ぎません。彼らの狩りの対象は昆虫全般に及びますが秋口になると特に攻撃性が増し自分たちよりもはるかに数の多いミツバチや他のスズメバチの巣を集団で襲撃するという特異な行動を見せます。これは幼虫を育てるための動物性タンパク質を効率よく確保するための戦略でありオオスズメバチの偵察隊が獲物の巣を見つけると特殊なフェロモンを散布して仲間を呼び寄せ数十匹から数百匹の精鋭部隊で組織的な殺戮を開始します。対抗策を持たないニホンミツバチ以外のハチの巣はわずか数時間で壊滅し幼虫や蛹はすべて略奪されオオスズメバチの幼虫の餌となります。また彼らは地中に巣を作るという習性を持っておりこれが人間にとって非常に厄介な問題を引き起こします。キイロスズメバチなどが軒下に巣を作るのに対しオオスズメバチは木の根元の空洞や土の中に巨大な巣を構築するためハイキングやキノコ狩りで山に入った人間が気づかずに巣の近くを踏んでしまい振動に怒った大群が一斉に地中から湧き出して襲ってくるという事故が後を絶ちません。巣の防衛本能は極めて強く巣の周辺数メートル以内に近づくだけでカチカチという顎を鳴らす警戒音を発しそれでも立ち去らない者には容赦なく攻撃を仕掛けます。彼らの毒には仲間を興奮させて攻撃目標を知らせる警報フェロモンが含まれているため一匹に刺されるとその匂いを嗅ぎつけた数十匹のハチが集中的に襲いかかってくるという悪夢のような連鎖が発生します。このようにオオスズメバチは個の強さと集団の統率力を兼ね備えた完璧な戦闘生物であり彼らと遭遇した際に人間ができることは静かに後ずさりしてその場を離れることだけです。駆除業者であってもオオスズメバチの駆除は命がけの作業であり専用の防護服と強力な薬剤そして熟練の技術がなければ太刀打ちできない相手です。世界的に見てもこれほど巨大で凶暴なハチは珍しく海外の研究者がわざわざ日本まで観察に来るほどですが私たち日本人にとっては身近な自然の中に潜む時限爆弾のような存在であり彼らに対する正しい知識と畏怖の念を持つことが共存のための唯一のルールなのです。