キッチンの奥や家具の隙間から大量のゴキブリのフンを発見したとき、多くの人が反射的にとってしまう行動が、実は状況を悪化させる致命的なミスであることがあります。最もやってはいけないことの筆頭は、掃除機で一気に吸い取ってしまうことです。一見、効率的にフンを除去できるように思えますが、掃除機の強力な吸引力はフンの塊を砕き、その中に入っている病原菌やアレルゲン、乾燥したフェロモン成分を微細な粉塵に変えてしまいます。そして、その粉塵は掃除機のフィルターを通り抜け、排気口から部屋中に勢いよく撒き散らされるのです。これにより、掃除をした本人が喘息発作を起こしたり、その後数日にわたって部屋全体が汚染された空気で満たされることになります。大量のフンがある場所は、言わば細菌の火薬庫のようなものであり、それを物理的に拡散させる行為は自殺行為に等しいと言えます。次に避けるべきは、素手で触れることです。フンには前述の通り多種多様な細菌が付着しており、爪の間や皮膚の微細な傷口から体内に入り込む危険があります。また、フンの油分は非常に落ちにくく、石鹸で洗った程度ではフェロモンの匂いが残ってしまうこともあります。必ず使い捨てのゴム手袋を着用し、作業後は手袋を裏返して密閉して捨てることが基本です。また、乾いた雑巾やブラシで乾拭きすることも避けるべきです。フンを擦ることで粉塵が舞い上がるだけでなく、壁紙や床の隙間にフンの成分を押し込んでしまう結果になり、いつまでも特有の嫌な臭いが消えなくなります。正しい方法は、まずフンにアルコールスプレーや除菌剤を直接噴霧して湿らせ、舞い上がりを防いでから、使い捨てのペーパータオル等で優しく包み込むように拭き取ることです。さらに、除去した後の場所に市販の消臭剤だけを振りかけるのも不十分です。消臭剤は臭いを上書きするだけで、彼らを引き寄せるフェロモン成分を分解することはできません。クエン酸やアルコールを使用して、脂質を含むフンの痕跡を化学的に分解・中和することが、再発防止には不可欠です。大量のフンを前にすると、一刻も早く消し去りたいという焦りが生じますが、その焦りが健康を害し、さらなるゴキブリの侵入を招くきっかけになっては本末転倒です。急がば回れの精神で、正しい装備と手順を守り、科学的な視点を持って清掃に当たることが、住環境を真にクリーンに保つための唯一の方法であることを忘れないでください。
大量のゴキブリのフンを掃除する際に絶対避けるべき行為