ゴキブリ対策として、ハッカ油の忌避効果は非常に有名ですが、自然界には、ハッカ油以外にも、ゴキブリが嫌うとされる香りを放つ植物が数多く存在します。これらの香りを、ハッカ油と組み合わせたり、場所によって使い分けたりすることで、あなたの家の防衛網は、より多角的で、突破されにくいものになります。また、香りのバリエーションが増えることで、対策自体を、より楽しみながら続けることができるでしょう。まず、ハッカ油と並んで、高い忌避効果が期待できるのが「クローブ(丁子)」です。カレーなどのスパイスとしてお馴染みのクローブですが、その独特の強く甘い香りの主成分である「オイゲノール」は、ゴキブリだけでなく、多くの害虫が嫌う成分として知られています。乾燥したクローブの実を、お茶パックなどに入れて、食器棚やシンクの下に置いておくだけで、効果が期待できます。次に、爽やかな柑橘系の香りも、ゴキブリは苦手とします。「レモン」や「オレンジ」の皮を乾燥させたものを、ネットなどに入れて吊るしておくのも良いでしょう。ただし、柑橘系の香りには、ゴキブリを誘引する成分も含まれているという説もあり、その効果については意見が分かれるところです。しかし、これらの皮に含まれる「リモネン」という成分には、ゴキブリの体の表面を覆うワックス層を溶かす作用があるため、直接スプレーなどで吹きかければ、殺虫効果も期待できます。また、ウッディで落ち着いた香りの「ベチバー」や、独特の土のような香りを持つ「ヒバ(檜葉)」といった樹木系の香りも、ゴキブリ忌避に有効とされています。乾燥させたベチバーの根や、ヒバのチップを、押し入れやクローゼットに入れておけば、防虫と同時に、消臭や調湿の効果も得られます。これらの天然の香りは、化学的な殺虫剤のように、即効性があるわけではありません。しかし、その穏やかな効果は、私たちの暮らしに優しく寄り添い、ゴキブリにとって「なんとなく居心地の悪い家」という印象を、静かに、しかし確実に与え続けてくれるのです。