長年、蜂退治の第一線で活躍してきたベテラン駆除員は、現場で多くの「失敗の跡」を目にしてきたと言います。彼が最も警鐘を鳴らすのは、インターネットや聞きかじりの知識だけで行う、根拠のない独自の手法です。例えば、ホースで水をかけて巣を落とそうとする行為は、プロの視点から見れば自殺行為に等しいと言います。蜂の巣の外壁は驚くほど撥水性が高く、水がかかった程度で壊れることはありません。それどころか、水をかけられたことで蜂は極度の興奮状態に陥り、周囲にいるすべての人を敵とみなして無差別に攻撃を開始します。また、市販の殺虫剤を遠くから少しずつ噴射して様子を見るという方法も、実は非常に危険です。中途半端な刺激は蜂の警戒心を煽るだけで、巣の深部にいる蜂まで薬剤を届かせることができません。プロが行う蜂退治は、一撃で全ての蜂を無力化することに心血を注ぎます。彼はまた、服装についても厳しい指摘を投げかけます。白い服を着ていれば大丈夫という過信は禁物です。白は確かに黒よりは狙われにくいですが、蜂は「動くもの」や「強い匂い」にも敏感に反応します。香水や整髪料、あるいは汗の臭いさえも、彼らにとっては攻撃のトリガーになり得ます。プロが使用する防護服は、単に厚手であるだけでなく、蜂の針が滑って刺さらないような特殊な素材で作られており、さらに呼吸による二酸化炭素の排出さえもコントロールする工夫がなされています。もう一点、一般の人が見落としがちなのが「戻り蜂」の存在です。巣を物理的に除去したとしても、その時に外出していた蜂たちが数日間は元の場所を彷徨い続けます。彼らは家を失ったことで非常に神経質になっており、巣があった場所の近くを通っただけの住人を刺すケースが後を絶ちません。プロの退治では、戻り蜂対策としてトラップを設置したり、長期間効果が持続する薬剤を散布したりするのが常識です。彼は最後に、蜂退治において「自分を信じすぎないこと」が最大の安全策だと語りました。少しでも高い場所にある、あるいは蜂の出入りが激しいと感じたら、それはすでに個人の手に負える範疇を超えています。自分の命、そして家族や近隣住民の安全を守るために、確かな技術と装備を持った専門家に任せることは、決して恥ずかしいことではなく、最も理性的で責任ある行動なのです。
蜂退治のプロが語る絶対に避けるべき素人判断