秋の行楽シーズン、ハイキングやバーベキューといった、屋外での活動中に、クロスズメバチに遭遇してしまった。そんな、背筋が凍るような瞬間に、あなたの取るべき行動が、その後の運命を大きく左右します。パニックになり、誤った行動をとってしまうと、穏やかだったはずの蜂を刺激し、痛みを伴う集団攻撃を誘発しかねません。刺されないための、正しい知識と対処法を、緊急時のために頭に入れておきましょう。まず、あなたの食事などに、一匹のクロスズメバチが寄ってきた場合。これは、威嚇や攻撃ではなく、単に餌を探しているだけです。ここで、最もやってはいけないのが、「手で払いのける」ことです。急な動きは、蜂を極度に興奮させ、「攻撃された」と誤解させてしまいます。騒がず、大声を出さず、静かに、その場を少し離れるなどして、蜂が自然に興味を失い、去っていくのを待つのが、最も安全な対処法です。次に、より危険なのが、ハイキング中などに、自分の周りを、複数の蜂が、まとわりつくように飛び始めた場合です。これは、あなたが、気づかないうちに、彼らの巣のテリトリーに侵入してしまったことを示す、極めて危険なサインです。蜂は、「これ以上近づくな」という、最終警告を発しているのです。この警告を無視してはいけません。ここでも、走って逃げるのはNGです。逃げるものを追いかけるという、蜂の習性を刺激してしまいます。やるべきことは、蜂を刺激しないように、ゆっくりと、静かに、後ずさりするようにして、今来た道を引き返すことです。姿勢を低くすると、より攻撃の対象として認識されにくくなります。服装にも注意が必要です。蜂は、天敵であるクマなどを連想させる、黒い色や、ひらひらと動くものに強く反応します。秋の山に出かける際は、できるだけ白っぽい、体にフィットした服装を心がけましょう。また、香水や香りの強い整髪料も、蜂を誘引する原因となるため、避けるのが賢明です。万が一、刺されてしまった場合は、すぐにその場から20メートル以上離れ、安全な場所で応急処置を行います。そして、もし、全身のじんましんや息苦しさといった、アナフィラキシーショックの兆候が見られた場合は、ためらわずに救急車を呼んでください。冷静さと、正しい知識。それこそが、あなたを蜂の針から守る、最強の鎧となるのです。