害虫駆除の現場で長年経験を積んできた私たちが、お客様から最も多く受ける相談が、どこからゴキブリが入ってくるのかという切実な悩みです。家の中をどれだけ綺麗に掃除していても、クロゴキブリが姿を現すのには明確な理由があります。彼らは人間の数ミリの油断、そして建物の物理的な欠陥を見逃さないエキスパートだからです。まず、多くの人が見落としがちなのが「排水管のトラップ」です。長期間外出して水を使わなかったり、使っていない排水口があったりすると、本来は虫の侵入を防ぐために溜まっている水、いわゆる封水が蒸発して無くなってしまいます。すると、下水管の中で繁殖していたクロゴキブリは、乾いた管を通って直接シンクや浴室に姿を現すことになります。これは、古い家だけでなく最新の住宅でも起こり得る現象です。次に注意すべきは、壁の内部です。一軒家であっても集合住宅であっても、壁の裏側には電気の配線や水道の配管が通る空洞が存在します。クロゴキブリはこの暗くて狭い空間を移動ルートとして利用し、コンセントプレートの隙間や、天井の照明器具の取り付け部から室内へダイブしてきます。お客様は「壁から湧いてきた」と仰いますが、厳密には「壁の中を通って入ってきた」というのが正解です。また、意外な侵入口として挙げられるのが、換気扇のレンジフードです。調理をしていない時間帯、換気扇のファンが止まっている隙を突いて、彼らは外の排気口から逆流するように侵入します。特に飲食店が近い住宅地では、このルートからの侵入が非常に多く見られます。さらに、私たちプロの視点では、家の基礎部分にある床下換気口も重要なチェックポイントです。床下は適度な湿度と暗さがあり、彼らにとっては天国のような場所です。そこから床の継ぎ目や配管の立ち上がり部分を通じて、一気に居住スペースまで登ってきます。クロゴキブリがどこから来るのかを知ることは、駆除作業の半分を終えたも同然です。私たちは強力な薬剤を撒くだけでなく、こうした侵入経路を一つずつ特定し、物理的に封鎖する防護措置を提案します。彼らは数ミリの隙間さえあれば、骨格を柔軟に変形させて通り抜けることができます。その驚異的な身体能力を知り、住まいの死角を徹底的に潰していくことが、クロゴキブリとの終わりなき戦いに終止符を打つためのプロの極意なのです。