それは、私が一人暮らしをしていた、築40年の古いアパートでの出来事でした。その部屋の照明は、天井に直接取り付けられた、半球状のガラスカバーを持つ、昔ながらのシンプルなタイプでした。ある日の夜、ベッドに寝転がりながら、ぼんやりと天井を眺めていた私は、照明カバーの内側に、いくつかの黒い点々が付着しているのに気づきました。最初は、ただの汚れかホコリだろうと、気にも留めていませんでした。しかし、その数は、日を追うごとに、少しずつ増えていっているような気がして、私の心の中に、小さな不安が芽生え始めました。そして、ある週末、意を決して、その正体を確かめるべく、椅子の上に乗り、照明のカバーを外してみることにしました。カバーをひねって、そっと下に降ろした、その瞬間。私の頭の上に、パラパラと、乾いた何かが降り注いできました。そして、目の前に現れた光景に、私は声にならない悲鳴を上げました。照明カバーの底には、おびただしい数の、様々な種類の虫の死骸が、まるで地層のように堆積していたのです。小さなコバエやガ、そして数匹の、明らかに「でかい」と分かる、黒光りするクモの亡骸。私の部屋の照明は、いつの間にか、小さな虫たちのための、巨大な墓場と化していたのです。私は半狂乱で、カバーと電球の周りを掃除し、二度とあんな光景は見たくないと、固く心に誓いました。原因は明らかでした。古いアパートは隙間だらけで、虫が簡単に入り放題。そして、レトロな白熱電球が放つ強い光と熱が、彼らを惹きつけていたのです。私はその日のうちに、ホームセンターへ走り、防虫ネットと隙間テープ、そして人生で初めてのLED電球を購入しました。あの虫の墓場の衝撃的な光景は、私に、家の気密性の重要性と、照明選びが、快適な生活を送る上で、いかに大切であるかを、身をもって教えてくれた、忘れられない教訓となりました。
私の部屋の電気が虫の墓場になった日