照明カバーに潜む大きな虫、そのほとんどはクモ
天井の照明カバーの中で、黒く大きな影が動いている。多くの人が、そのシルエットからゴキブリなどの害虫を連想してパニックになりますが、実は、この現象の犯人として、最も頻度が高いのは「クモ」です。特に、家の中に棲みつき、徘徊して獲物を探すタイプの「ハエトリグモ」や「アシダカグモ」の子供などが、その有力な容疑者となります。では、なぜクモは、わざわざ照明器具の中という、一見すると奇妙な場所に入り込むのでしょうか。その理由は、彼らが極めて合理的なハンターだからです。前述の通り、夜間の照明には、光に誘われて、ガやコバエ、ユスリカといった、様々な小さな虫が集まってきます。クモにとって、この照明器具の周りは、獲物が次から次へと自ら飛び込んでくる、最高の「狩場」なのです。彼らは、このレストランの中心部、つまり照明カバーの中に陣取ることで、最も効率的に餌にありつこうとします。照明器具の熱を逃がすための通気口や、カバーの隙間から内部に侵入し、そこで獲物がかかるのを待ち構えるのです。時には、カバーの内側に小さな巣を張っていることさえあります。つまり、照明カバーの中にクモがいるということは、その餌となる、より小さな虫たちが、あなたの家に侵入し、光に集まってきているという、間接的な証拠でもあるのです。クモは、これらの害虫を捕食してくれる「益虫」としての一面も持っています。しかし、だからといって、照明の中でうごめくその姿を、歓迎できる人は少ないでしょう。幸いなことに、日本の家屋にいるほとんどのクモは、人間に害を及ぼすことはありません。彼らもまた、生きるために、最も合理的な場所を選んだ結果、そこにたどり着いただけなのです。その生態を理解すれば、過度な恐怖を感じることなく、冷静に対処することができるはずです。