沖縄への旅行といえば青い海と白い砂浜そしてラグジュアリーなリゾートホテルでの優雅な滞在を思い描くものですがその完璧なバカンスの夢を一瞬にして悪夢へと変える可能性があるのがゴキブリとの遭遇でありこれは格安民宿に限った話ではなく一泊数十万円もするような高級ホテルであっても決して無縁ではないという冷厳な事実を観光客は知っておく必要があります。本土の感覚では高級ホテルにゴキブリが出るなど衛生管理がなっていない証拠だと怒りを覚えるかもしれませんが沖縄の、特に自然豊かな海沿いや森の中に建つリゾートホテルにおいて昆虫の侵入を完全に防ぐことは物理的に不可能に近いという事情があります。沖縄に生息するワモンゴキブリやコワモンゴキブリは本土のクロゴキブリよりもはるかに体が大きく生命力も強靭でありわずかな隙間や人の出入りに合わせて堂々とロビーや客室に侵入してきます。特に低層階のガーデンビュールームやコテージタイプの客室は地面と近いため遭遇率が格段に高くなりますしベランダには彼らが好む湿気や植物が豊富にあるため夜に窓を開けて波の音を聞こうなどとロマンチックな気分に浸っているとその隙に天井から茶色い爆撃機が舞い込んでくるという事態になりかねません。また意外な盲点となるのがチェックイン時に持ち込むスーツケースや手荷物であり空港からの移動中やレンタカーのトランクの中あるいは立ち寄った観光地でバッグのポケットや隙間にゴキブリが潜り込みそのまま客室まで運んでしまうというケースも少なからず存在します。ホテル側も定期的な燻煙消毒やベイト剤の設置など涙ぐましい努力を続けていますが亜熱帯の爆発的な繁殖力の前には人間界の防虫対策など焼け石に水のような状態であることも多くフロントにクレームを入れても「自然が豊かな証拠ですので」とやんわり諭されるか部屋を交換してもらう程度の対応しか期待できないのが現実です。もし部屋で遭遇してしまった場合はフロントに連絡すればスタッフが駆除に来てくれますが彼らが到着するまでの数分間はその巨大な敵と密室で対峙しなければならずその恐怖は筆舌に尽くしがたいものがあります。楽しい旅行を台無しにしないためには沖縄はそういう場所なのだという事前の心構えを持つことが何より重要であり荷物は常にチャックを閉める部屋に入ったらまず水回りとクローゼットを確認するそして万が一のために殺虫スプレーの位置を把握しておくといった防衛策を講じることが賢明です。高級ホテルの洗練されたサービスと野生丸出しの巨大ゴキブリという強烈なコントラストもまたある意味では沖縄という土地が持つ多様な側面の一つでありそのワイルドさも含めて南国を楽しむくらいの度量がなければ真のリゾート体験は完結しないのかもしれません。