都会を離れ、自然豊かな里山で暮らし始めて驚いたことの一つに、季節ごとに現れる大きな蜂たちの存在感がありました。春先、冬眠から覚めた女王蜂が重々しい音を立てて飛び回る姿から始まり、夏から秋にかけての活動の最盛期まで、彼らは常に私たちの暮らしのすぐそばにいます。当初は、あの大きな蜂の羽音を聞くたびに身をすくませ、一刻も早く排除しなければと考えていましたが、里山での生活が長くなるにつれ、彼らとの「適度な距離感」こそが、穏やかな共生のための知恵なのだと気づかされました。里山において、大きな蜂たちは単なる恐怖の対象ではありません。彼らは森の掃除屋であり、また農作物を荒らす害虫を捕食してくれる頼もしい存在でもあります。例えば、オオスズメバチが庭先で見かける不快な毛虫やイモムシを狩っていく姿を見ると、彼らが生態系の中で果たしている大きな役割を実感せずにはいられません。もちろん、家のすぐ近くに巣を作られてしまえば駆除を検討しなければなりませんが、それ以外の場所で見かける大きな蜂に対しては、こちらから手を出さないという暗黙のルールを設けています。彼らもまた、自分の仕事に忙しく、人間が攻撃を仕掛けない限りは、関心を持って近づいてくることはありません。里山の人々の中には、大きな蜂の行動を見て季節の移ろいを感じ取る人もいます。蜂の活動が活発になれば本格的な夏の到来を知り、大きな蜂が姿を消せば冬支度の時期を悟る。そんな風に、彼らは自然のリズムを伝えるメッセンジャーのような役割も果たしています。大きな蜂との共生において最も大切なのは「畏敬の念」を持つことです。彼らは非常に賢く、また家族を守るために命をかける情熱を持っています。その強大な力を認めつつ、互いのテリトリーを侵さないように配慮すること。洗濯物を干す前に大きな蜂がいないか確認する、草刈りの前に巣がないか周囲を見渡すといった、ささやかな注意を払うだけで、不幸な事故の多くは防げます。都会的な感覚では、大きな蜂は排除すべき悪と捉えられがちですが、里山の風景の中では、彼らもまたなくてはならない大切な住民の一人なのです。大きな蜂が羽ばたく音を聞きながら、自然という大きな仕組みの一部として自分たちも生きているのだと感じること。それが、里山暮らしが教えてくれた、真の意味での豊かな生き方なのかもしれません。
里山での暮らしを支える大きな蜂との適度な距離感