数年間放置されていた親戚の古い空き家を整理することになったとき、私は家の主となっていた真の住人たちの存在に震撼することとなりました。玄関を開けた瞬間に漂ってきた、湿り気を帯びた埃と、何かが腐ったような、そして何より強烈な「ゴキブリの臭い」に、私は一歩退きました。作業を始め、長年動かされていなかった押し入れの奥や、キッチンの収納棚の扉を開けるたびに、そこには黒い悪夢が広がっていました。棚の四隅や、新聞紙が敷かれたままの床面には、まるで黒胡椒をぶちまけたかのような大量のゴキブリのフンが堆積していました。それは、人間がいなくなった後の家で、彼らがいかに自由奔放に、そして爆発的に繁栄していたかを示す動かぬ証拠でした。特にキッチン周りの惨状は筆頭で、シンクの裏側の配管が通る隙間には、フンが何層にも重なり、地層のようになっている場所さえありました。これほどの量のフンを見るのは生まれて初めての経験であり、その場所がかつては清潔な食事を準備する場所であったことが信じられないほどでした。さらに恐ろしいことに、大量のフンに混じって、脱皮した後の殻や、中身が空になった無数の卵鞘が散らばっており、そこが何世代にもわたるゴキブリたちの生活の拠点であったことを物語っていました。空き家という環境は、水や餌が限られているはずですが、彼らは壁紙の糊や埃、さらには仲間の死骸までを糧にして生き延び、この空間を支配していたのです。この大量のフンを前に、私は個人での清掃に限界を感じました。これほどの規模の排泄物を除去する際、舞い上がる粉塵や潜んでいる病原菌の量は計り知れず、素人が不用意に手を出せば、自分の健康を著しく損なう危険性があるからです。結局、防護装備を完備したプロの業者を呼び、家全体の燻蒸と特殊清掃を依頼することにしました。業者の作業によって大量のフンが取り除かれ、強力な消臭剤で特有の臭いが消えていく過程を見ながら、私は住まいというものの脆さを痛感しました。人間が住まなくなった家は、瞬く間に他の生物の領土へと塗り替えられてしまいます。大量のフンは、その侵食の完了を告げるサインだったのかもしれません。ようやく元の姿を取り戻しつつある部屋の隅々を見渡し、かつての賑やかだった頃の記憶と、目の前の無機質な空間のギャップに、私は深い溜息をつかずにはいられませんでした。空き家の管理がいかに重要か、そしてゴキブリという生き物の執念深さを、私はその大量のフンという形を通して、生涯忘れられない教訓として刻み込まれることとなりました。