スズメバチといえば深山に棲むオオスズメバチが最強とされていますが人間の生活圏である都市部や住宅街において最も遭遇率が高く被害件数が多い「実質的な最強の敵」はこのキイロスズメバチです。彼らはオオスズメバチよりも一回り小さく体長は二・五センチメートル程度ですがその名の通り体に黄色い部分が多く鮮やかな警戒色をしています。キイロスズメバチが都市部でこれほどまでに繁栄している理由は彼らの持つ驚異的な「適応力」と「営巣場所の柔軟性」にあります。他のスズメバチが比較的静かな場所を好むのに対し彼らは軒下、屋根裏、床下、戸袋、壁の隙間、さらには放置された古タイヤの中や空き缶の中まで雨風がしのげる場所であればどこにでも巣を作ることができます。しかも彼らには「引越し」という習性があり春先に狭い場所で作った初期の巣が手狭になると夏場に広くて開放的な場所へコロニーごと移動し短期間で巨大な巣を作り上げます。このため昨日までは何もなかった軒下に突然バレーボールのような巨大な巣が出現し住人をパニックに陥れることが頻繁に起こります。彼らの巣はスズメバチ類の中でも最大級になり直径が一メートル近くに達することもあり中にいる働き蜂の数も一千匹を超えるマンモスコロニーを形成します。数が多ければそれだけ防衛本能も高く巣に近づくものに対しては集団で執拗に攻撃を仕掛けてきます。また彼らは食性も非常に幅広く昆虫の狩りはもちろんのこと人間の出す生ゴミや空き缶に残ったジュース、バーベキューの肉や魚など何でも餌にします。この「都会のゴミを利用できる」という点が彼らの爆発的な増加を支えておりカラスと並んで都市環境に適応した野生動物の成功例と言えるでしょう。性格は非常に攻撃的で巣から十メートル以上離れていても振動や騒音に反応して襲ってくることがあり特に黒い色や動くものに対して敏感です。駆除に関してもその巣の大きさとハチの数の多さそして高所や閉鎖空間などの作業困難な場所に巣を作ることからプロの業者でも手を焼く難敵です。都市伝説のように語られる「ハチは白い服を着ていれば刺されない」という説もキイロスズメバチの大群の前では通用しないことが多く彼らのテリトリーに入ってしまえば服装に関係なく集中攻撃を受けるリスクがあります。都会で暮らす私たちにとってキイロスズメバチは決して山の中の生き物ではなく隣の家の軒下や公園のトイレなどすぐそばに潜む日常的な脅威であり彼らの生態を知り早期発見と早期駆除を心がけることが安全な生活を守るための必須条件となっているのです。
都市を占拠するキイロスズメバチの戦略