ある日キッチンで米粒のような黒い虫が一匹歩いているのを見つけティッシュで潰して捨てた数日後また同じような虫を見つけ今度は二匹三匹と日に日に目撃数が増えていくという現象はゴキブリの幼虫が家の中で孵化した際によく見られる典型的なパターンでありこれは大量発生の前触れではなくすでに大量発生が起きていることの証左です。クロゴキブリの場合メスはあずき豆のような形をした卵鞘を物陰に産み付けますがその中には二十個から三十個程度の卵が入っておりこれらが一斉に孵化することで突如として数十匹の「小さいゴキブリ」が家の中に出現することになります。孵化したばかりの幼虫は非常に小さく白っぽい色をしていますがすぐに硬化して黒くなり白い縞模様を持つようになります。彼らは集団で生活する習性があり孵化した場所の近くに固まって潜んでいることが多いため一匹見つけた場所の周辺には必ずと言っていいほど兄弟たちが潜んでいます。シンクの下や排水管の隙間、ダンボールの裏などを懐中電灯で照らしてみると数十匹の幼虫がうごめいている光景を目にして卒倒しそうになることもあるでしょう。幼虫のうちは行動範囲が狭く飛ぶこともできないため巣の周辺で餌を探しますが体が大きくなるにつれて行動範囲を広げ家全体へと拡散していきます。この段階で駆除し損ねると彼らは脱皮を繰り返して成虫となりそれぞれが新たな卵を産むという負の連鎖が始まります。大量発生を防ぐためには「小さいゴキブリを一匹見たら近くにあと三十匹はいる」という事実を直視し徹底的な捜索を行うことが不可欠です。バルサンなどの燻煙剤は部屋全体に薬剤を行き渡らせるため散らばった幼虫を一網打尽にするのに有効ですが卵鞘という硬い殻に守られた卵には効かないという弱点があります。そのため一度燻煙剤を焚いた後卵が孵化するタイミングを見計らって二週間から三週間後にもう一度焚くという「二度焚き」を行うことが全滅への近道です。また毒餌剤を設置することも非常に効果的ですが幼虫は顎の力が弱く大きな固形の餌を食べられないこともあるためジェルタイプや顆粒タイプの食べやすい毒餌を選ぶなどの工夫も必要です。小さいゴキブリがチョロチョロと歩き回る光景はそれだけで精神的なストレスとなりますが彼らがまだ小さく生殖能力を持たない今のうちに根絶やしにすることが将来の巨大な恐怖を回避するための唯一の手段でありこの時期の対応の遅れが数ヶ月後の地獄を招くことになるのです。