「蜂の巣があるのですが、どの種類か分からなくて不安です」という相談を受ける際、私はまず、巣の形と場所を詳しく尋ねるようにしています。実は、蜂の巣の形状は、その主である蜂の種類を特定するための最も正確な手がかりとなるからです。プロの視点から言えば、巣を見れば相手の攻撃性や駆除の難易度、さらには今後のリスクまでが手に取るように分かります。まず、最も分かりやすいのがアシナガバチの巣です。彼らの巣は、お椀をひっくり返したような形で、下から覗くと六角形の穴がいくつも並び、そこに白い繭や幼虫が見えるのが特徴です。一見するとシャワーヘッドや蓮の実のようにも見えます。ベランダの物干し竿や、庭の低い植え込みなど、人間の生活圏に近い場所に作られることが多いのがこの種類の特徴です。次に、最も注意が必要なスズメバチの巣です。初期の段階では、フラスコを逆さまにしたような独特の形をしており、細い出入り口があるのがコガタスズメバチの典型的な巣です。これが成長すると、バレーボールのような大きな球体になり、表面には茶色や黄土色のマーブル模様が現れます。出入り口は一つだけで、内部の様子を外から見ることはできません。キイロスズメバチの場合、屋根裏や壁の隙間に巨大な巣を作ることもあれば、軒下に剥き出しで作ることもあります。もし、巣が土の中にあったり、朽ちた木の根元からハチが頻繁に出入りしていたりするなら、それは世界最強の毒を持つオオスズメバチの巣である可能性が極めて高いといえます。さらに、少し珍しいケースとして、ミツバチの巣があります。彼らは閉鎖的な空間、例えば屋根裏や床下、あるいは大きな墓石の隙間などに、板状の巣を何枚も垂直に垂れ下げるように作ります。巣の隙間から溢れ出すほどの大量のハチが蠢いているのが見えるのが、ミツバチの巣の最大の特徴です。蜂の種類によって、巣を作る場所も材料も異なります。アシナガバチは樹皮を噛み砕いて唾液と混ぜて紙のような素材を作りますが、ミツバチは自分の体から分泌する蜜蝋で巣を作ります。巣の形を見ることで種類が特定できれば、無闇に近づくべきか、あるいは速やかに業者を呼ぶべきかの判断が下せます。特に球体でマーブル模様のある巣は、非常に攻撃的な種類であるスズメバチの家ですので、絶対に自分では手を出さないでください。蜂の種類を知ることは、彼らの住まいを知ることから始まります。日頃から家の周りを点検し、小さな巣のうちに発見することが、大きな被害を防ぐための最も効果的なアドバイスとなります。
駆除の専門家が教える巣の形から判断する蜂の種類