「朝洗濯物を干したときは何もなかったのに昼過ぎに見たら庭木に巨大な蜂の塊ができている!半日でこんな巨大な巣ができるなんて!」という通報が役所や駆除業者に寄せられることがありますがこの現象の正体は通常の「巣作り」とは全く異なるミツバチの「分蜂(ぶんぽう)」と呼ばれる引越し行動です。蜂の巣は何日でできるかという常識を覆すこの現象は正確には巣そのものではなく数千匹から一万匹ものミツバチが女王蜂を中心にして一箇所に固まり団子状になっている状態を指します。春から初夏にかけて古い巣で新しい女王蜂が生まれると旧女王蜂は働き蜂の約半数を引き連れて巣を飛び出し新しい住処を探す旅に出ますがその途中で一時的に木や壁に止まって休憩をとることがありこれが分蜂群(ぶんぽうぐん)です。この蜂球(ほうきゅう)はわずか数分から数時間のうちに形成されるため目撃した人にとっては魔法のように突然現れた脅威として映りますが彼らは腹一杯に蜜を蓄えており攻撃性は極めて低く基本的には人間が手を出さなければ刺してくることはありません。またこの塊はあくまで仮宿であり探索蜂が良い営巣場所を見つければ数時間から数日のうちに一斉に飛び去って跡形もなく消えてしまいます。したがってこの状態のミツバチを見つけた場合は慌てて殺虫剤を撒いたり業者を呼んだりする必要はなく静かに見守っていれば自然といなくなることがほとんどです。ただし家の壁の隙間や屋根裏の通気口などが最終的な引越し先として選ばれてしまった場合は話が別であり一度内部に侵入されて巣を作られると蜜による汚染や建物の損傷につながるため侵入経路を塞ぐなどの対策が必要になります。分蜂はミツバチという種の繁栄のための神聖な儀式のようなものでありその迫力ある姿は自然の驚異そのものですが「巣が数時間でできた」と誤解してパニックになる前にまずはそれがハチの体でできた塊なのかそれともハニカム構造を持った本当の巣なのかを冷静に見極めることが重要です。もしそれが茶色くてマーブル模様の外皮を持つボール状の物体であればそれはスズメバチの巣であり急いで対策が必要ですが黒っぽいハチの塊であればそれは旅の途中の休憩所ですので「お疲れ様」と心の中で声をかけてそっとしておくのが粋な対応と言えるでしょう。このように「突然できる巣」には種類によって全く異なる事情があることを知っておくことは不要な殺生と出費を避けるための知恵となります。