木枯らしが吹き始め気温が一桁台になるとあれほど猛威を振るっていたスズメバチの姿もぷっつりと見かけなくなります。冬はスズメバチの恐怖から解放される安息の季節ですが彼らが一体どこへ消えてしまったのかを知ることは翌年の対策を考える上でも興味深いテーマです。実はスズメバチのコロニー(家族)は冬を越すことができません。ミツバチのように巣の中で身を寄せ合って暖を取りながら越冬するハチもいますがスズメバチの場合は新しく生まれた女王バチ以外のすべての個体が冬の訪れとともに死に絶えます。これまで巣のために尽くしてきた働きバチたちも交尾のためだけに生まれたオスバチたちもそして創始者である旧女王バチも寒さと飢えと寿命によってその生涯を閉じるのです。十一月後半から十二月にかけて巣の周辺にハチの死骸が落ちているのを見かけることがありますがそれは彼らの帝国の崩壊を示しています。生き残った新女王バチだけは巣を離れ朽ち木の中や土の中あるいは家の屋根裏の断熱材の中などで単独で冬眠に入ります。彼女たちは体内の代謝を極限まで落とし凍結しないための物質を体液に含ませて春が来るのをじっと待ち続けます。さてここで気になるのが残されたあの巨大な巣はどうなるのかという点です。結論から言えばスズメバチの巣は一年限りの使い捨て物件であり翌年また同じ巣が使われることは絶対にありません。したがって冬になって完全にハチがいなくなった巣を軒下に見つけたとしてもそこから再びハチが出てくる心配はないのです。この時期は巣を撤去する絶好のチャンスでもあります。夏の間は恐ろしくて近づけなかった巣も冬なら安全に取り外すことができその精巧な建築構造を観察したり教材として利用したりすることも可能です。ただし稀に暖冬の影響などで活動期間が延びていたり巣の中にまだ数匹の生き残りが潜んでいたりする可能性もゼロではないため撤去する際は念のため棒などで突いて反応がないか確認し防護措置をとった上で行うのが無難です。また冬の間に家の周りの点検を行い隙間や屋根裏への侵入経路を塞いでおくことは新女王バチが越冬場所としてあなたの家を選ぶのを防ぐ効果があります。もし屋根裏で越冬中の女王バチを見つけた場合はスプレー式の殺虫剤で簡単に駆除できますが可哀想に思う気持ちが湧くかもしれません。しかしその一匹を見逃せば来年の夏には数千匹の脅威となって帰ってくることを忘れてはなりません。冬はスズメバチとの戦いにおける完全勝利の瞬間であると同時に次なる戦いに向けた準備期間でもあるのです。
冬の到来とスズメバチの最期について