ゴキブリの糞が単なる不潔な排泄物以上に厄介で危険な存在である最大の理由はそこに「集合フェロモン」と呼ばれる特殊な化学物質が含まれている点にあります。このフェロモンは文字通り仲間を呼び寄せるための信号として機能しておりゴキブリたちはこの匂いに誘引されて集まり集団を形成するという習性を持っています。つまり一匹のゴキブリが排泄した糞は次のゴキブリを呼び寄せそのゴキブリもまたそこで排泄をすることでさらに匂いが強まり結果としてその場所が巨大な巣窟へと発展していくという負のスパイラルを引き起こす原因となるのです。人間にとっては不快極まりないカビ臭いような油っぽい匂いも彼らにとっては「ここは安全だ」「仲間がたくさんいる」という安心感を与えるアロマのようなものでありこの匂いが残っている限り何度駆除しても新しいゴキブリが引き寄せられてしまいます。したがってゴキブリ対策において糞の掃除は単なる美観の問題ではなくフェロモンという誘引シグナルを遮断するための重要な戦術的行動となります。糞を見つけたらまずはその周辺を徹底的に清掃しなければなりませんが水拭き程度ではフェロモンの成分である油分を完全に取り除くことは難しいためアルコール除菌スプレーや住居用洗剤を使って念入りに拭き取る必要があります。特に木材や壁紙などに染み込んでしまった糞のシミはフェロモンが残留しやすいため漂白剤を使ったり場合によっては壁紙を張り替えたりするなどの抜本的な対策が必要になることもあります。また糞がたくさん落ちている場所は彼らの通り道(ゴキブリロード)になっている可能性が高いため掃除をした後にはそのルート上に忌避剤を撒いたり毒餌剤(ベイト剤)を設置したりして「ここはもう安全な場所ではない」ということを学習させることも有効です。集合フェロモンの力は強力で一度定着した巣の周辺には強烈な匂いが染み付いておりプロの駆除業者はこの匂いを嗅ぎ分けることで巣の場所を特定することさえあります。私たちが目に見える糞を取り除いても目に見えないフェロモンが残っていればそれは「空室あり」の看板を出しているのと同じことであり外部からの新たな侵入者を招き入れることになりかねません。ゴキブリを駆除したはずなのにまたすぐに出るという悩みを持つ家庭の多くはこのフェロモンの除去が不十分であることが原因です。糞を見つけるたびに「仲間を呼ぶな!」と念じながら徹底的に消毒し匂いを消し去ることこそがゴキブリの連鎖を断ち切るための最も確実な防衛策なのです。
仲間を呼び寄せる危険なフェロモンの除去法